田中ミクシィの過去を決めつける

田中ミクシィは多分、中学・高校を女子校で過ごす。

明るい性格で、友達は多かったが、男の子はちょっと苦手。

高校時代、私立校同士の合コンなどに誘われることはよくあったのだが、門限が厳しかったことと、バドミントン部の練習が忙しかったことで、一度も参加したことはない。

大学受験を現役でパスし、成城大学あたりに進学。

そこで初めて、男女交際というものをする。

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コメント

  1. LSK より:

    男女交際の相手は、サークルの2年上の先輩。

  2. LSK より:

    サークルはテニスサークル。

    2年上で同じ学科の先輩とは、大学入学後初めての試験のときに、たまたま同じ教室でテストを受けていたことをきっかけに仲良くなる。

    その後、夏休み、夏合宿で急進展。

  3. まさゆき より:

    この年は語学の単位を落とす。

  4. LSK より:

    キスに進むまで3ヶ月かかる。

  5. LSK より:

    キスだけで別れる。

  6. LSK より:

    別れた時期は、11月。学祭の直後。

    学祭の準備期間中、他の女子に優しくしている彼氏の姿を見て、やきもきしていたミクシィは学祭の打ち上げでついに爆発。

    彼氏は一過性のものだろうと思い、あまり深刻にとらえていなかったのだが、そのことが見事に裏目に出て、二度と口をきかない関係に。

  7. おーや より:

    彼氏はなぜあんなことをしたのか。

    人の気持ちが分からない人間にはなりたくない。

    クリスマス、女友達と飲んで独りになった帰り道、

    ミクシィはカウンセラーになろうと決意する。

    大学1年生、冬。

  8. LSK より:

    それからと言うものの、友達の誘いを断ってでも、勉強に励む日々。

    しかし大学2年の夏休みを目前とした頃、図書館で勉強していたミクシィは出会ってしまった。

  9. おーや より:

    「カウンセリング入門」

    その本を手にしていた彼は、

    なんと同じ学科で別のクラスの中田君。

    「中田君も、カウンセラーを目指しているのかな?」

    中田君に急激な親近感を持つミクシィ。

    しかし奥手なミクシィは自分から中田君に

    声をかけることができない。

  10. おーや より:

    それから1週間後の雨の日、図書館に駆けこんだミクシィは、

    出てきた男におもいっきりぶつかってしまう。

    カバンから散らばる男の荷物。謝らなくちゃ。

    そう思いながら男の方を向くと、中田君が立っていた。

    思わずミクシィの口から言葉が出る。

    「はじめまして田中ミクシィです。」

  11. LSK より:

    一瞬虚を突かれ、思わず

    「は、はじめまして中田……カフスです!」

    と、ミクシィには伝わらないであろうぼけをかます中田。

    しかし、わけがわかっているのかいないのかは別にして、二人の視線が交差すると、どちらともなく笑いがこみ上げてきた。

    それが、この恋の始まりだった。

  12. まさゆき より:

    「僕,中田未久史っていいます。なんだか似てますね,名前」

    「そうですね。ふふふ」

    何を話したらよいのか分からない二人。しばらく沈黙が続くが,それは心地よいものだった。

  13. LSK より:

    「雨、やみませんね」

    所在なさげに窓の外を眺め、ミクシィはつぶやいた。

    「僕、今日カサ忘れちゃってさあ。雨宿りしてたんだよね、ここで。」

    思わず折り畳み傘の入った自分のかばんをいっそう強く握るミクシィ。

  14. LSK より:

    でも、次の言葉がなかなか出てこない。

    いっそここで思い切って、

    「私の傘で一緒に帰りませんか?」

    と言えたら、どんなに楽だろう。

    傘を持っているのにそれを切り出せない罪悪感と、自分一人で傘をさしてこの場を離れては申し訳ないような気持ちがごちゃまぜになり、ミクシィから言葉を奪っていた。

    そうミクシィは解釈していた。

    だがこの時、本当はただただ一分でも一秒でもいいから話を続けていたいという願望、ほのかで、それでいて熱い芽生えたばかりの感情が、ミクシィの言葉を遮っていたことに気づくのは、翌朝、目が覚めた瞬間のことだった。そして、今まで気が付けば中田のことを目で追ってしまったり、中田の声が聞こえただけで胸が高まった理由に、ようやく思い当たった。

    自分のことなのに、初めての恋ではないのに、どうしてこんな単純なことに今日まで気づかなかったんだろう。

    もしあのとき、あのまま一緒に帰ることができたら……。

  15. まさゆき より:

    そのころ,中田はミクシィの気持ちを知るべくもなく熟睡していた。

    そう,この男,正直言って恋愛にとんとうといのであった。

  16. LSK より:

    その日は、自分の気持ちに気付いたミクシィを祝福するかのように、よく晴れていた。昨日の雨など、嘘だったかのように。

  17. まさゆき より:

    次の日。

    ミクシィは朝からずっと中田のことばかり考えていた。

    自分の気持ちに気が付いたが,

    どうしたらいいのかはまったく見当も付かなかったのだ。

    「こんなとき,恋愛経験が豊富だったら違うのかな?」

    なんてことをミクシィは考えながら歩いていた。

    前の彼氏の時は,こんなこと考えたりもしなかった。

    なんとなくそういう雰囲気になっていて

    なんとなくつきあうようになった気がする。

    そういえば,

    なんで彼とつきあってたんだろう?

    「……なかさん,田中さん!」

    ミクシィは,ようやく自分を呼ぶ声に気が付いた。

  18. LSK より:

    振り返るとそこには中田がいた。

    いつもの図書館に、いつもの中田がいるだけ。

    ただそれだけなのに、ミクシィの胸は高まり、顔が紅潮していく。

    赤い顔を見られてしまう、この鼓動が聞こえてしまうかもしれない。

    そう思ったミクシィは、気が付けば図書館の外へと駆けだしていた。

    中田は右手をミクシィの背中の方に差し出しながら

    「たな……」

    と言うのが精一杯だった。

    中田は突然のことに困惑し、上げた手を下ろすのすら忘れ、立ちつくしていた。

  19. まさゆき より:

    「なーにしてんの? 中田クン。もしかしてフラれちゃったのかなー」

    後ろから突然声をかけられ、中田は飛び上がるくらいビックリしてしまった。

    振り返ると、見慣れた顔がニヤニヤしながらこっちを見ている。

  20. おーや より:

    妹の中田牡丹であった。

    「なんだぼたんか、おどかすなよ。それに中田クンとか呼ぶの

     やめろって。誤解されちゃうだろ。お前だって中田のくせに」

    「えー、何を誤解されちゃうのー?」

    こうやっていつも牡丹のペースにはまる中田君。

    兄の威厳はからきし無い。

  21. LSK より:

    牡丹は2歳年下で、幼い頃からいつも一緒に遊んできた。

    兄から見ても、妹として、という以上に可愛い女の子だ。

    牡丹が中学3年の頃、ボーイフレンドからかかってきた電話をたまたま受けた時など、

    「今、牡丹はいません」

    なんて嘘を吐いて、切ってしまったことがあるほど、未久史は牡丹を可愛がってきた。

  22. まさゆき より:

    「ぼたん,お前こんなところでなにやってんだよ」

    「なにって失礼ね。勉強に決まってるじゃない。これでも受験生なんだから。お兄ちゃんこそなにやってんのさ。今の誰? ていうか彼女さん? ケンカでもしたの? だからお兄ちゃんは女の子の気持ちをもう少し考えないとダメだっていってるのに・・・」

    「あー分かった分かった。それは認めるから,じゃなくて田中さんのことじゃなくて,認めるのは女心が分からないっていうとこで,田中さんは彼女でもなんでもないっていうか。もう,からかうのもいいかげんにしろ!」

    「ふーん。田中さんっていうんだ。今の人」

    また牡丹にやられた。生来ウソが下手だというのもあるが,牡丹と話しているといつもしゃべらなくていいことまで話してしまう。

  23. LSK より:

    「で、田中さんとはドコまでいっちゃったのかな?」

    「や、だからなんでもないんだって言ってるだろ!」

    いつの間にか、声が大きくなってしまっていた。

    「あー。焦ってるー。あやしいなぁ……」

    「お前が変なこと言うからだよ!」

    「ま、じゃあそういうことにしておきますよ。お兄ちゃん」

    意地悪っぽく、それでいて甘えるような声色を使う牡丹。こいつ、こんな調子でいろんな男に……いやいや考えるのはよそう。

    そんなこんなで牡丹をその場に残し、図書館を後にすると、ふいに牡丹の言葉がよみがえってきた。

    「彼女さん?」

    彼女、彼女……うーん。違うけど、なんか悪くない気もする。

    あれ?

    俺、どうしちゃったんだろう?

  24. まさゆき より:

    ミクシィは,気が付くと図書館から100mほど離れた場所まで走ってきていた。まだ動悸が収まらずドキドキしている。息も上がってないのに。

  25. おーや より:

    「ああ、あたし、彼のことが…」

    それ以上は頭の中で文字を浮かべることさえ面映い。

    そう、恋愛なんて突然やってくるもの。

    以前付き合ったあの先輩の時には、

    こんなにドキドキしたりときめいたりしなかった。

    初めて味わうこの時めきという感情は、

    まだ彼女の頬を赤く染めていた。

    しかしその赤い頬のミクシィが眺めているのは中田と牡丹だったのだ。

    「あの女(ひと)、まさか中田くんの…?」

    牡丹が中田の妹とは知る由も無いミクシィ…

  26. おーや より:

    ミクシィには中田が随分遠くに見えた。

    「あの女といる中田君、とても楽しそう…」

    見たことも無い中田の表情。ミクシィの気持ちは揺れる。

  27. LSK より:

    そうだよね。

    今更私が中田君を好きになったって、中田君にはもう好きな人や彼女がいたって不思議はないもんね。

    うん、そうだよ。

    しょうがないよ。

    出会うタイミングが悪かっただけだから。

    だからって、別れろなんて思えないし。

    私があきらめれば、それでいいんだよね。

    そう自分に言い聞かせるミクシィ。

    だけどなぜだろう?

    こんなに胸が苦しく、あきらめようと強く思えば思うほど、涙が止まらなくなるのは。

  28. LSK より:

    「ああ、今日はもう帰って寝よう。

    でもこんなに苦しいのに眠れるかしら…」

    涙いっぱいの目をこすりながら、家路に向かおうと、

    図書館の角を曲がったミクシィ。

    前をよく見ていなかったため、歩いてきた人とぶつかりそうになる。

    「ごめんなさ…」

    顔を上げるミクシィ。彼女の頬が更に朱に染まる。

    そう、そこにいたのは中田その人だったのである。

  29. LSK より:

    「あ、田中さん……」

    「な、中田君……」

    なぜかそれからの言葉が出てこない。

    意を決して言葉を交わそうとした二人、

    「あのさ」

    「あのね」

    「ん?」

    「え?」

    「いや、なんでもない」

    「あ、うん。わたしもなんでもない」

    「それじゃ」

    「うん、またね」

    居心地悪そうに、その場から走り去ったミクシィの背中を見つめ、中田はただ立ちつくしていた。

    ミクシィの白いワンピースを、夕焼けが朱に染めていた。

  30. おーや より:

    家に帰ったミクシィは、鏡の前に立っていた。

    鏡に映った自分の顔をじっと見つめる。

    ふと、中田君といたあの女の顔を思い出す。

    「でも、負けないんだから!」

  31. LSK より:

    そのころ、中田はよもやミクシィに誤解をされているとも思わず、家族で夕食を囲みながら物思いに耽っていた。

    「なんか田中さん、よそよそしいんだよなぁ。嫌われてるのかなぁ……」

    嫌われているのでは?

    そう思った瞬間、中田は大好物の豚のショウガ焼きが喉を通らなくなった。

    嫌われたく……ない。

    恋に鈍感な中田も、ようやくこのとき、ミクシィへの気持ちに気が付いた。

    だが、ミクシィが自分を嫌っていると信じている中田。

    いいんだ。

    遠くから見ているだけでも、いやその方が、振られたりするわけじゃないし、僕も傷つかなくて済むから。

    そう思いこもう、思いこもうとしているのに、いや思いこもうとすればするほどに、ミクシィへの気持ちがこみ上げてくる。

    昔の青春ドラマのように、夕陽に向かって叫べたらどんなに楽だろう。

    「僕は田中さんが好きだ!」

    と。

  32. おーや より:

    「お兄ちゃん、何言ってるの?」

    牡丹がつっこむ。家族の視線に気づく中田君。

    思わず口に出して言ってしまったらしい。

  33. LSK より:

    ちょっと気まずそうに微笑する両親と、

    その傍らで笑顔を作りながら心中穏やかでない者…。

    そう、ほかならぬ牡丹だった。

    兄が自分を大切にしてくれる事は分かっていたし、

    牡丹もまた、兄を慕う気持ちは強かった。

    愛する兄、その兄が今恋に目覚めたのだろうか。

    兄が幸せになることはうれしい。しかし、果たして

    今までどおり兄は自分を愛してくれるのか?

    「田中、ミクシィ…」

    心でそうつぶやく牡丹。

    そんなことは知る由も無い中田君。

    遠くから見守るだけで俺は満足できるんだろうか。

    ほとばしるこの気持ちを抑えることはできるのだろうか。

    と、悶々とした夜をすごすのであった。

  34. LSK より:

    中田はいつだって、布団に入って横になれば、一瞬で眠りに落ちてしまう。

    いや、落ちてしまうはずだった。

    なのに今日に限って、眠れない。

    目をつぶると浮かぶのは、走り去るミクシィの姿。

    「あんなに可愛いんだから、俺なんかじゃ無理だよな……」

    そう思ってあきらめたつもりになり、とりあえず眠ろうとすると今度は、ミクシィのはにかんだ笑顔を思い出してしまう。

    「ああ、やっぱり好きだ。どうしようもないくらい。ほとんど話をしたこともないというのに、なんでこんなに好きになっちゃったんだろう」

    そんなことを考えていると、部屋のドアが開いた。

    「お兄ちゃん、起きてる?」

    牡丹だ。

    なんとなく面倒くさかったので、中田は寝たふりをしていた。

    「お兄ちゃん、寝てるの?」

    そう言いながら、足音が徐々に近づいてくる。

  35. まさゆき より:

    「お兄ちゃん、あのね……」

    牡丹が消え入りそうな声で話しかけてくる。

  36. LSK より:

    気がつけば、牡丹は中田の寝ているベッドのすぐそばに立っていた。

    目覚まし時計の秒針の音が、二人にはやけに大きく聞こえていた。

    「お兄ちゃん、あのね……」

    牡丹がもう一度繰り返す。

    いつもの牡丹なら、

    「お兄ちゃん」

    の後に、頼まないと止まらないほど、いろいろな言葉があふれ出るというのに、なんだか様子が違う。

    なんだかおかしい。

    そう気付いた中田の胸は、不安と好奇心で高鳴りだしていた。

    目覚まし時計の秒針の音に、たまに家の外を吹く風の音が混じる。

    それでも部屋は静かで、中田も牡丹も、自分の心臓の鼓動が、お互いに聞こえてしまわないかと、そればかりが心配だった。

    そのとき、中田の耳には牡丹の声が届いた気がした。

    だが中田は、自分の心臓の鼓動にばかり気をとられていたため、牡丹が何を言ったのかなんてわからなかった。

    「牡丹、何を言ったんだろう……」

    そんなことを考えているうちに、気付けば朝が訪れていた。どうやらいつの間にか眠り込んでしまっていたらしい。

    窓の外からは、雀の鳴き声が聞こえてくる。

    「あれ、牡丹……。夢、だったのかなぁ?」

  37. まさゆき より:

    昨日の夜、結局ミクシィは一睡もできなかった。

    昨日、図書館で中田君と一緒にいた女性、誰なんだろう。

    聞いてみようかな、でも彼女って言われたらどうしよう。

    やっぱり怖くて聞けない……。どうしよう。

    そんな考えにずっと支配され、

    気がついたら朝を迎えていたのだ。

    こんなとき、人の考えがわかったらどれだけ楽なのだろう、

    という考えが、一瞬ミクシィの頭をよぎる。

    「ミクシィ、早く降りてらっしゃい!」

    母の元気な声が階下から聞こえてきた。

  38. LSK より:

    「今日は一限から授業でしょ? 早くご飯食べて。

     あら、ひどい顔。寝てないの?」

    「えっ? ちょっと鏡見てくる」

    鏡に映るミクシィの顔は青白く、瞼は腫れているし、目の下にはうっすらと隈が。

    こんな顔じゃ、学校に行けない。

    中田君に見られたくない……。

    「お母さん、今日、休む」

    「授業は大丈夫なの?」

    「うん、出席とる授業じゃないし。大丈夫だと思う。なんか疲れちゃった」

    「あらあら、五月病かしらねぇ」

    「そんなんじゃないよ、ただ……」

    「ただ?」

    「ん〜ん、なんでもない」

    「あら、もしかして失恋でもしたの?」

    「そんなんじゃないよ! まだ始まっても……。って、なんでお母さんはそうデリカシーがないかなぁ」

    「ふふ。ごめんなさいね。でもほら、せっかく作ったんだから朝ご飯だけは食べて、それから横になったら?」

    「……うん。ありがと」

  39. NTT鈴木 より:

    ごはんを食べ終えたミクシィ。

    あんなに眠れなかったのに、

    満腹感からか眠気に襲われる。

    「ま、昨日全然寝てないし…ムニャリ グウ。」

    深い眠りに付いたミクシィ。

    プルルー

    何か音が聞こえる。

    もう眠りについて大分たったように感じる。

    「…何の音?」

    それは枕元に置いてあった携帯電話だった。

    「着信してる!」

    急いで出るミクシィ。

    「もしもし!」

    「…もしもし? 中田です…」

    「!!!!」驚くミクシィ。

    「ごめんね、今日田中さん休んだでしょ。

     昨日も様子おかしかったし、なんだか心配で、

     田中さんの友達に番号教えてもらっちゃったんだ」

  40. NTT鈴木 より:

    中田君から電話がくるなんて本当にびっくりで言葉もでない。

    「・・・・・・」

    「どうしたの?大丈夫?」

    「・・・・・・」(どうしよう何か喋らなきゃ)

    「勝手に番号とか聞き出したから怒ってるのかな?」

    「・・・・・ぁ」(そんなことないよ。すごく嬉しいよ)

    「そうだったらごめんね。じゃぁ切るよ。早くよくなるといいね」

    「・・・・ぅん」

    「それじゃぁまたね」

    「待って!」

    ここで言わないとずっと言えないような気がした。

    面と向かってないからこそ、正直に話せる気がした。

  41. おーや より:

    「あのね、中田君、聞きたいことがあるんだけど」

    「なんだい田中さん、僕に聞きたいことって」

    勇気を出すの、ミクシィ。そう自分に言い聞かせる。

    「昨日、図書館に……」

    その時、中田君を牡丹が呼んだ。

    「お兄ちゃん、ご飯だよー」

    中田一家はできるだけ、夕飯を家族一緒に食べるようにしていた。

    それは習慣で、中田君にとって当たり前のことだった。

    「ごめん、牡丹が呼んでるからまた後でかけ直すよ、ごめんね」

    「え……」

    「本当にごめんよ」

    「……ううん、いいの……電話ありがとう」

    「元気になってね、じゃあね」

    携帯を持ったままミクシィはしばらく呆然としていた。

    「ぼたん……」

  42. LSK より:

    窓際の勉強机の隅に置いてある充電器に携帯電話を置いたミクシィは、中田と一緒にいたあの女の子と、中田の口から出た「ぼたん」という名前が、同一人物なのかどうかと、ただひたすら考えていた。

    えっと、中田君の彼女が「ぼたん」さんだとしたら……。

    もしかして、一緒に住んでいるのかなぁ?

    彼女がいるかも?ってだけで、私なんかじゃだめだと思っちゃうのに、同棲なんかされてたら、もう敵前逃亡するしかないよね……。

    でもそう考えるだけで、なんでこんなに胸が苦しいんだろう。

    心臓のあたりが、重くて冷たくて、だけどなんだか熱いよ……。

  43. まさゆき より:

    「・・・にいちゃん、お兄ちゃんってば!!」

    「ん、なに?」

    「もー、何じゃないよ、さっきから呼んでるのにぜんぜん返事しないんだからー」

    「あ、そうか。ごめんごめん」

    「ねえ、そこのソース取って」

    「えー、牡丹目玉焼きにソースかけるなよ、日本人なら醤油だろ。ほら」

    「いいじゃん。好きなんだから」

    いつもの食卓、いつもの食事。何気ない風景に見えるが、

    未久史の意識は上の空だった。

    好き、か。簡単にいえたらいいのにな。

    さっきの電話も田中さんぜんぜん話してくれなかったし、

    やっぱ嫌われてんのかな、俺。

  44. LSK より:

    そういえばあのときも、あのときも、あのときも……。

    僕と会うたびに田中さんはよそよそしかった気がする。

    なんか様子がおかしくって、もしかしたら?なんて思ったこともあったけど、冷静になって考えてみれば、僕のことが嫌いなだけなんだよな。

    でも何か嫌われるようなことしたっけなぁ……。

    あ、でも、とくに仲がいいわけでもないけど嫌いな奴ぐらい、僕にもいるもんな。

    そういうこと、なのかな……。

    そういう誤解って、説けないのかな。

    第一印象で嫌われたら、それは誤解ですらないのかな……。

  45. LSK より:

    土日を挟んで月曜日。

    金曜日にさぼってしまったミクシィは、今までにたいした理由もなく学校を休んでしまったことがないだけに、登校してもなんとなく居心地の悪さを感じていた。

    そんなときに限って、友達に会えない。

    一人、学食でいつものランチを食べながら、ため息をついていた。

    「はぁ……。ほんとは金曜日の3限の講義、出席とってたのになぁ……。なんで休んじゃったんだろ」

    そんな気分の時は、周囲でバカ騒ぎをしている一団が憎たらしくてたまらない。

    「私がこんなに落ち込んでいるのに、何なのかしらあの人達。うるさいったらありゃしないわ」

    キッとキツイ視線を向けたその先には、友人達に囲まれた中田がいた。

    「おいおい、なにしけた面してんだよ」

    「い、いや別になんでもないよ……」

    「おー? なんだかムキになってない?」

    「いいから話せよ。俺ら、だれにも言わないし、高校からの親友だろ?」

    「ま、まあそうだけどさ。だけど、だからって……」

    「さては中田……女に振られでもしたのか?」

    「違うよっ! ……そんなんじゃ。っていうか、その前の時点で諦めなきゃいけないような気がして……。」

    「あ、ごめん。ちょっと調子に乗りすぎた。そっか。お前もようやくそういうことに目がいくようになったのか」

    「いや、いいんだ。自分でもびっくりしてる。だから、どうしていいかわからなくてさ……」

    「しかしなぁ……。高校時代、あんだけモテてたのにだれとも付き合おうとしないで俺らとバカやってたお前が……」

    「そうだよ、俺らお前のこと心配してたんだぜ? もしかして俺のこと好きなのかなぁ? とかさ」

    「バカ。そんなんじゃないよ。たださ、牡丹が……」

    「あー、おまえんとこのお姫様な……っと噂をすればあそこにお姫様が!」

    「やばい、行こうよみんな」

    「うし。気付かれると面倒だからな」

    「あれ……? 牡丹さんのこと、中田君は避けてるんだ」

  46. 中田と友人達は、急いだ様子で学食をあとにしてしまった。

    (あーあ 牡丹さん、ちょっとかわいそうかな)

    遠くから牡丹を見つめるミクシィ。

    !!!!

    牡丹とミクシィの目が合ってしまった。

    そしてそのまま、牡丹はミクシィに向かって歩き出した。

  47. 「こんにちは」

    驚くミクシィ

    「田中さん… でしたよね」

    「この前お兄ちゃんと図書館の前で話してましたよね」

    「お、お兄ちゃん?」

    「はい、私、中田の妹で牡丹って言います」

    牡丹が中田の妹と知り、思わず安堵の顔を浮かべるミクシィ

    「あっ、もしかして今ホッとしました?」

    「えっ?」

    焦るミクシィ

    「田中さんって、お兄ちゃんのコト好きなんですか?」

    「えっ? えっ… 好きって…」

    鼓動が早くなり、顔が熱くなるのがハッキリとわかった。

    「なんか、お兄ちゃんと話してた田中さんを見てたら好きなのかなぁって…」

    「好きって… えっと…」

    「ダメですよ。お兄ちゃんには…」

    突然牡丹の携帯が鳴った。

    「もしもし、あっ! お兄ちゃん。うんうん、わかった今からそっちに行くね」

    「ごめんなさい。ではまた…」

    不敵な笑みを残してその場を立ち去る牡丹。その笑みに一抹の不安を感じるミクシィ

    「お兄ちゃんには…」

    (やっぱり彼女がいたんだな…)

    ミクシィの心は揺れに揺れていた…

  48. 【次回予告】

    牡丹が中田の妹と知り安堵したのも束の間、牡丹の言葉で一気に暗雲が立ちこめるミクシィ

    それを知らずに大好物の‘生姜焼き’を頬張る中田

    そして、兄へただならぬ思いを寄せる牡丹

    三人の関係の糸は縺れ始めていた。

    次回「お兄ちゃんのバカ」

    次回もハッスル・ハッスル!

  49. LSK より:

    「んーと、ちょっと話が長くなるんで……田中さ、いやセンパイ、このあとちょっとお茶でもしませんか?」

    「え……」

    ミクシィにしてみれば、今ままでどんなに知りたくても叶わなかった、中田の姿を知る絶好のチャンス。

    でもなんとなく、牡丹の笑みが不敵なそれに映り、どうも気乗りがしない。

    それにこのあとも授業が……。

    「あ、もしかしてー。授業、ですか?」

    「え、ええ」

    「そっかぁー。じゃ、しょうがないですね。またの機会に。あ、あの、せっかくだから携帯の番号とアドレス、交換しません?」

    「あ、そ、そうね。せっかくだから」

  50. LSK より:

    ミクシィは牡丹と別れたあと、一人で授業を受けていた。

    でも今日はなんだかいつにも増して退屈だ。

    いろいろなことが気になってしかたがない。

    あの娘が中田君の妹の牡丹さんだということはわかった。

    本当なら、ここで安心してもいいはずなのに、どういうわけか、何かが引っかかっている。

    90分が経ち、終業を知らせるチャイムが鳴り響くとほぼ同時に、ミクシィの携帯にメールが届いた。

    牡丹からだ。

    「今、教室の外にいます」

    あれ……?

    牡丹には、どこの教室かなんて伝えていなかったはず。

    どうしてだろう? と思いながら、外に出たミクシィにめがけて、満面に笑みをたたえた牡丹が駆け寄ってきた。

    「センパイ!」

    「あ、中田さん……」

    「センパイ、なんだかよそよそしいですよ? 中田さんなんて。牡丹って呼んでくださいよ!」

    「あ、うん。じゃ、じゃあ牡丹さん、どうしたの?」

    「えへへ……。さっきね、センパイと別れたあと、尾行しちゃった」

    そう言いながら片目をつぶり、舌を出す牡丹の顔を見たミクシィは、自分が持ち合わせていない底抜けな明るさにたじろくと同時に、牡丹に対する好感がわき上がってくるのを感じた。

    「えー、どうして?」

    「だって牡丹、もう今日は講義なくて、今日のうちにセンパイとお話がしたかったんですよ! だからあとをつけて、そんで待ってました!」

    「なんだ、なら言ってくれればよかったのに。こんな授業出ても出なくても同じだし」

    「またまたー。センパイはそんなにサボったりするタイプじゃないでしょう? じゃなきゃお兄ちゃんが……」

    「えっ?」

    「いや、なんでもないです。と・に・か・く! このあと、お時間ありますか? センパイ!」

    「あ、うん。大丈夫」

    「じゃあ、お茶しません?」

    「そうね。せっかくだからそうしよっか!」

    「うし! きーまりー! じゃ、行きましょ?」

    言うや否や、駆け出すように歩き出した牡丹の後をミクシィは追いながら思った。

    こんな可愛らしい妹さんがいると、中田君も女の子に対する審査眼が厳しくなっちゃうよね。

    やっぱり私なんかじゃ無理なんだろうなぁ……。

  51. LSK より:

    10分後。

    大学の正門から、5分ほど最寄り駅に向かって歩いた場所にあるエクセルシオールカフェに2人はいた。

    「センパイの学科って、かっこいい人多くないですか?」

    「え、そ、そうかなぁ。あんまりそういう風に思って男の人見たことないし……」

    「センパイって……。お兄ちゃんのことどう思ってるんですか?」

    「え、どうって……。突然、なによ、もう……」

    「どうって、そりゃもちろん、好きなんですか? 嫌いなんですか? それともどちらでもないんですか? って聞いてるんですぅ」

    「……」

    「あー。センパイ、真っ赤だー。かわいー。やっぱ好きなんでしょ? もし良かったら、私からお兄ちゃんに言っておきましょうか?」

    「え。ち、違うの。あの、だって中田君とは、まだ知り合って間もないし。そうよ、だってね、今までのトータルの会話時間だって、中田さ……牡丹さんとこうしている時間よりもよっぽど短いと思うの。そんなんで、好きだなんて。ねえ? そんなのおかしいじゃない?」

    「ぷっ……。あはは。やっぱセンパイかわいい! 純なんですね!」

    「純って……、そんなんじゃないよ。こう見えても私だって、前に付き合っていた人だっているし、それは年相応に……」

    「そういうのが純だって言ってるんですよ! 誰かと付き合っただけで、っていうか、しちゃっただけで私は汚れたーなんて思ってるんじゃないですか? そういう風に思うことが、純だって言ってるんです!」

    「え、ええ。あの……」

    そう言いかけながら、なんだかいいように牡丹に振り回されている自分を滑稽だと思いながら、牡丹に対する親しみが増していることに気付いたミクシィは、少し、戸惑っていた。

    「ともかく! センパイはお兄ちゃんのことが好き、と」

    「え……。あ……。でも、ほらまだ知り合って……」

    「なぁ〜に言ってるんですか! 恋は故意にするものじゃないですよ! 恋は落ちるものなんです。そこに出会ってからの時間なんて、関係ないんだから!」

    「そ、そういう風に言われちゃうと困っちゃうんだけど……。うん、でも、そ、そうかな……いや、違うの。お友達として、いい人だなぁって思ってはいるけど、まだそんな……」

    「まったくも優柔不断だなぁ。でもお兄ちゃん、そういう人のことけっこう好きだと思いますよ? お兄ちゃんも優柔不断だから、きっと似たもの同士みたいな感じで!」

    「えっ」

    「あー、お友達とか言ってたのに、なんかすごーく嬉しそうな顔しましたよ? センパイ」

    「そ、そうかな」

    「ええ。でもね……。お兄ちゃんはやめた方がいいと思うなぁ……、だって」

    「えっ……」

    「あ、そろそろ私バイトなんで、失礼します! 私明日からちょっと用があって学校これないんですけど、また来週にでも!」

    「あ、うん。じゃ、じゃあ気をつけてね」

    「センパイこそ、気をつけて帰ってくださいね!」

    そういう牡丹の瞳に何か、暗い影が宿ったことを、いつものミクシィなら気付いていただろう。

    だがミクシィはそのとき、牡丹の言葉が頭の中を埋め尽くしていた。

    「お兄ちゃんはやめた方がいいと思うなぁ……、だって」

    だって、なんだというのだろう?

    その先を考えるだけで、ミクシィの胸は重く、苦しくなっていた。

  52. LSK より:

    「ただいま〜」

    玄関の扉を開けた牡丹の目に、兄の靴が映った。

    もう、お兄ちゃんたら脱いだ靴は揃えろって、いつもお母さんに叱られてるのに……と思いながら、脱ぎ散らかした兄の靴を揃えることが牡丹の日課だった。

    そして1日の中で、最も幸福な瞬間だった。

    「お兄ちゃん!」

    ちょっと怒ったような声を出してみる。

    「お兄ちゃんってば!」

    「んー?」

    居間の奥から聞こえてくる、緊張感皆無な兄の声が、牡丹の心を優しく包むと同時に、サディスティックな衝動が頭をもたげてくる。

    「また靴脱ぎっぱなしじゃない! おかーさんに怒られるよ!」

    「おー。わりー。なおしといてー」

    「まったくもう!」

    これもいつもの会話だ。

    牡丹は思う。

    この会話が失われる日、それがきっと、自分がこの家から出て行かなければならない日だと。

    でもその日はきっと、まだ先のこと。

    いまはただ、兄のそばにいよう。

    兄がいれば、何もいらないのだから……。

  53. LSK より:

    その日の夕食は、父と母が知人のパーティに出かけているため、中田と牡丹の2人だけだった。

    母が調理して冷蔵庫に入れておいたものを、牡丹が温め、中田の前に出す。

    「お兄ちゃん、なんか私たち、新婚さんっぽくない?」

    「は?」

    「は?って、もう……。お兄ちゃんノリわるー」

    「何バカいってんだよバカ」

    「あのね、お兄ちゃん」

    「ん?」

    「今日ね、新しいお友達ができたんだー」

    「へえー、そりゃよかったねぇ。このきんぴらごぼう、うめぇなぁ」

    「もう、ちゃんと聞いてよ! 誰だと思う?」

    「そんなのわかるわけねえじゃん」

    「そのお友達、お兄ちゃんのこと好きなんだって」

    「へぇ。そりゃありがたいねぇ……。で、誰?」

    「お兄ちゃんの知ってる人だよ」

    「ふぅん。でも知ってる人っていっても大勢いるからなぁ」

    「田中さんだよ」

    「……た、田中さんて、田中ミクシィさん? んなわけないか」

    「んなわけあるの。その田中さんだってば!」

    「そ、え、え、あ。なんで? あの? ん? 好きって? は? 何? どういう意味?」

    「何そのうろたえ方。お兄ちゃんも好きなんだ、田中さん」

    「ば、ばか。あの、なにをいっているのかな君は。そ、そんなわけ、ないよ? だって、まだ田中さんとはそんなに会話をしたこともないし、さ」

    「やれやれ……。二人して同じこと言うんだ。あのね、恋をするのに時間は関係ないの!」

    「あ、ま、まあそんなものかな。うん」

    「でもねお兄ちゃん、田中さんはやめた方がいいよ」

    「え? 何? どういうこと?」

    「そういうこと。あの人は……なんでもないや。とにかく、お兄ちゃんには似つかわしくないから!」

    「おい! お前、何でそんなこと言うんだよ。お前に田中さんの何がわかるんだよ。何か知ってることがあるんだったら言ってみろよ!」

    「言えないっていってんの!」

    「それじゃわかんないだろ! 何がだめなんだよ田中さんの!」

    「うるさい!」

    「大声あげてるのは牡丹だろ!」

    「もう知らないよ、お兄ちゃんのバカ!」

    牡丹はそれだけ言い残し、部屋へ駆け込んでカギをかけた。

  54. LSK より:

    食卓に一人取り残された中田は,考えていた。

    牡丹はどうして突然,あんなに怒り出したんだろう。

    いや,怒りたいのはどう考えてもこちらではないか?

    だいたい何の根拠があって,田中さんが僕のことを好きだなんて。

    しかも田中さんじゃダメだなんて。

    でたらめにも程がある。

    なんだか思い出していたら,どんどん腹が立ってきたな。

    でも……。

    牡丹は僕のかわいい妹で,いつも僕の言うことを素直に聞くし,僕のことをちゃんと考えてくれた。

    ちょっと困ることもあるけど,基本的にはいい奴だ。

    でたらめなんて言うような奴じゃない。

    だからきっと……,田中さんがたとえ僕のことを好きだとしても,田中さんには今つきあっている人がいるとか,そういうことなのかなぁ。

    うん,そういう面倒に巻き込まれるのは苦手だな。

    そっか。そうだとすれば,牡丹の言うこともなんとなくわかる。

    そりゃ僕だって,田中さんのことは好きだけど……。

    でも,お互いが幸せになれないのだとしたら,そんな気持ちを持たない方がいいんだ。

    牡丹にはあとで謝らないと……。

  55. りえ より:

    「牡丹、昨日の夜はゴメン、ちょっと言いすぎたよ、せっかく俺のコト気ずかっていってくれたのにな、ゴメ、、」

    「ヘンッッ、お兄ちゃんなんて嫌い!」

    そそくさと顔も見ず、牡丹は朝の授業へと家を出て行ってしまった。

    (まずい、、牡丹、まだ怒ってるよ。。)

    仲良く朝食を囲もうと望んだ中田だったが、牡丹の機嫌ナナメなまま見送ってしまった。

  56. LSK より:

    そんなことがあった日に大学に行くのは憂鬱だ。

    どうして学生って奴らは,誰も彼もこう脳天気なんだろう。

    大しておかしくもないことでげらげら笑いやがって……。

    昨日の牡丹との会話,そしてそれから一人で考え続けていたこと,今朝の牡丹……。

    なんだか何もかもが不愉快で,おもしろくなくて,いっそのことこんな世界なんか滅びちまえばいいのに……。

    そんな風に暗く,気持ちがささくれ立った日には,誰かを強烈に傷つけてしまいたくなる。

    もっとも,そんな度胸はないんだけれど。

  57. やり場のない気持ちを持て余し、校内をブラつく中田

    「あぁ、授業出るのめんどくさいな…」

    「そうだ、久々にマスターのトコロに行ってみよう」

    cafe「マーキュリー」

    ここは大学から駅と反対方向に歩いて10分ほどのところにあり、知る人ぞ知る隠れた名店である。広くはないが落ち着いた店内で、マスターが出すコーヒーは格別である。

    中田は大学入学当初からよく通っていて、店のマスターにかわいがってもらっていた。

    中田もマスターを兄のように慕っており、悩んだ時はよくマスターに相談にのってもらっていた。

    カランカラン…

    「こんにちは」

    「中田君。ひさしぶりじゃない!」

    「すいません、最近来られなくて…」

    「なんだい、久々に来たと思ったらやけに暗い顔して。どうかしたのか?」

    「ちょっと… 妹の牡丹とケンカしちゃって…」

    暗い顔ながらもバツが悪そうに苦笑いする中田

    「何? 牡丹ちゃんとケンカしたのか。ダメじゃないか。あんなカワイイ妹を怒らしちゃって」

    「うん… でも最近の牡丹、ちょっと様子がおかしいんですよ」

    「おかしいって?」

    「なんて言えばいいのかなぁ…」

    マスターが煎れたてのコーヒーを出してくれた

    カップを口元に持っていき一息つく中田

    「牡丹のやつ、最近やけに突っかかってくるんですよ」

    「それはいつものことじゃないか」

    「いや、なんていうかいつもの感じと違くて…」

    カランカラン…

    「いらっしゃい」

    マスターの声に反応して入り口に目をやった中田の視線の先には…

  58. LSK より:

    「お兄ちゃん……」

    「中田君……」

    「牡丹,それに田中さん……」

    三人は同時にそれぞれの目に映った人物の名を口にしたまま,一瞬固まってしまった。

    その状況から再度口を開いたのは,牡丹だった。

    「先輩,ほかのお店にしよ!」

    「え,え,ええ……」

    牡丹はミクシィの腕を引っ張るようにして,入りかけた店から出て行こうとした。

    「ちょっと待った!」

    あっけにとられてただ眺めることしかできないでいた中田の背後から,マスターが呼びかける。

    「牡丹ちゃん,久しぶりに来てそれはないでしょう?」

    「マ,マスター……ごめん,また来るから」

    「ダメダメぇ,そういって来なくなったお客さんけっこういっぱいいるんだから。ほら,今日はお兄ちゃんがご馳走してくれるってよ?」

    「ち,ちょっとマスター,僕は今お金が……」

    慌てた中田が口を挟もうとするが,マスターの

    「いいから!」

    という言葉に気圧され,何も言えなくなってしまった。

    「牡丹ちゃん,マスターがああいう風に言ってることだし,ここにしましょ? 中田君に聞かれたくない話だったら,離れた席に行けば大丈夫でしょ?」

    そんなミクシィの言葉に牡丹は折れた。

    「じゃあ,ここで。でも……」

    「でも?」

    「ちょうどいいから,席はお兄ちゃんの隣ね」

    「いいの?」

    「うん」

    力強くうなずく牡丹の目には,何かを決意したかのような光が宿っていた。

  59. ミクシィ・牡丹・中田の順でカウンターに腰掛ける。

    店内にはかすかに流れているマスターお気に入りのQUEENの曲とコーヒーサイフォンの音だけが心地よく響いている。

    しかし3人の周りには重苦しい空気が覆っており、さすがのマスターも口を出せない状況だった。

    やはりこの状況を打破したのは牡丹だった

    「お兄ちゃん、昨日はゴメンね」

    「あっ、あぁ」

    不意を付かれた発言にまともに返答できない中田

    「昨日は言い過ぎました。ゴメンナサイ」

    「うん、俺も言い過ぎたよ。ゴメンな牡丹」

    (中田君と牡丹ちゃん、兄弟ゲンカしてたんだ。だからかぁ)

    「はい、もう険悪なムードはお終いね。お兄ちゃん今日はご馳走してくれるんでしょ? 私おなかすいちゃってるからいっぱい頼むよ! 先輩も遠慮なく頼んでくださいね」

    「えっ、ええぇ!」

    険悪なムードが一転、突如変わった状況を飲み込めない中田。

    そんな中田に追い打ちをかけるようにマスターが

    「さぁ、お兄ちゃんの奢りだ。遠慮なく頼みな」

    「やったー。じゃ私はね、オムライスとオレンジジュース。それに食後にチーズケーキとアップルティをお願い。先輩は?」

    中田を心配そうに見つめるミクシィ

    そんな視線に気づいた中田は

    「はい、分かりました。もうドンドン頼んで! 田中さんも遠慮なく」

    「そう、じゃ遠慮なく…」

    なんとミクシィは牡丹と同じ量を頼んだ。

    そう、ミクシィはこう見えても大食らいなのだ。

    「先輩やるぅ。お兄ちゃん、先輩とデートしたら食事だけで破産だね」

    思わず飲みかけのコーヒーを吹き出す中田

    「バ、バカ。なに言うんだよ突然」

    「もう、お兄ちゃんってすぐ本気で受けとるんだからぁ」

    にぎやかな食事が終わり、落ち着いたトコロでミクシィが切り出した。

    「ところで牡丹ちゃん。話って何?」

    「あっ、そうだ忘れてた」

    「あのね、先輩と話してからお兄ちゃんに話そうと思ってたんだけど。もうそろそろ夏休みじゃないですか。でね、夏休み入ったら3人で海行きましょうよ」

    「海?」

    「そう、海。親戚のおじさんが海の近くに別荘持ってるんですよ。泊まるトコロはあるし、お兄ちゃんが車出すからそんなにお金掛からないし」

    「うん… でも…」

    「ほら、お兄ちゃんも黙ってないで何か言ってよ! 先輩の水着姿見られるかもしれないよ」

    「いや、だってほら、田中さんとはまだ出会って間もないし… 田中さんだって困ってるじゃないか…」

    中田とミクシィの煮え切らない態度を見て牡丹が強行突破にでた

    「んもう、だ・か・ら、仲良くなるために遊びに行こうって言ってるんでしょ! じゃもう決まりね。良いでしょ先輩?」

    「う、うん」

    牡丹の勢いに押され強引に説得させられた中田とミクシィ

    二人はこの夏急接近できるのか?

    次回新章突入! 「夏、海まっしぐら」編

    次回もシッコク・シッコク

  60. LSK より:

    それからというものの、中田は生涯で最も楽しみな夏休みを迎えることだけで頭がいっぱいになっていた。

    そんな具合だから、講義にも身が入らず、前期試験は惨憺たる結果に終わっていた。

    「ああ、こんなお調子者で浮かれてばかりの出来損ないじゃ、田中さんに嫌われちゃうよ……」

    そんな具合に思い悩みながらも、間近に迫った夏休みを思うと、中田の口角は自然と上がり、なんだかウキウキした気分になってしまうのだった。

    一方のミクシィも、中田と同じだった。

    試験勉強をしようと思っても、どんな水着を用意しようか、思い切ってビキニにしようか、いやそれでは中田君を挑発しているみたいではしたないと思われちゃうんじゃないか、といった思考が頭の中を支配して勉強が手に付かず、それ以前に体型をなんとかしないといけないのでは? ということに思い当たり、唐突に腹筋を始めるような日々を送っていた。

    ともあれ、なんとか無事に夏休みに突入。

    旅立ちの日を3日後に控えていた。

  61. 【旅立ちのまで後2日】(中田編)

    ミクシィとの旅行が2日後に迫り、中田のココロはウキウキであったが空は生憎の雨模様。

    「あぁ、俺ってホント雨男だなぁ… 2日後にはなんとか止んでくれないかな」

    「よし、晴れを祈って‘テルテル坊主’を作ろう!」

    いそいそとティッシュを丸める中田。

    背後に流れるラジオからの台風情報にも気づかずに…

  62. 【旅立ちのまで後2日】(牡丹編)

    コンコンッ

    「お兄ちゃん、入るよ」

    「キャッ、お兄ちゃん何このティッシュの山は!?」

    「あぁ、牡丹。お前もコッチ来て手伝えよ。2日後の晴れを祈って‘テルテル坊主’を作ってるんだよ」

    「お兄ちゃん、いい年してまだそんなコト信じてるの?」

    「だって俺が雨男ってコト知ってるだろ。こうまでしないと晴れるかどうか不安でさ…」

    「ふ〜ん。 あっ、そうだ」

    カシャ

    「コラッ、牡丹! 何撮ってるだ!」

    「へへぇ〜ん、この写メ先輩に送っちゃお!」

    「ちょっ、ちょっと止めろよ!」

    「バイバ〜イ」

    はしゃぎながら部屋を出る牡丹

    背後に流れるラジオからの台風情報にも気づかずに…

  63. 【旅立ちのまで後2日】(ミクシィ編)

    「雨けっこう降ってるなぁ… やっぱりアタシ雨女なのかなぁ」

    新しい水着も買い揃え、頑張った腹筋が報われないと思うとちょっと哀しい気持ちになるミクシィ

    「ヨシッ、いつもの神頼みをするか!」

    ティッシュを丸め‘テルテル坊主’を作り始めるミクシィ

    「こんなの作ってるの中田君に知られちゃったら笑われちゃうかな?…」

    そんな時に一通のメールを受信した

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━

    200X/07/27(水)16:05

    From:牡丹

    [件名]職人発見!

    [メッセージ]先輩見てください!

    お兄ちゃんいい年してまだこんなコト

    してるんですよ!(^^)

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━

    添付されている写真には大量の‘テルテル坊主’に囲まれた中田の姿が映し出されていた。

    「あっ、中田君も同じコトしてる!」

    思わず笑ってしまったミクシィ。と同時に同じ価値観の共有に嬉しさを感じるミクシィであった。

    背後に流れるラジオからの台風情報にも気づかずに…

  64. LSK より:

    【旅立ちの前日】(中田編)

    ラジオは相変わらず,台風の情報を伝え続けている。

    どうやら昨日よりも猛威を増している様子だ。

    「お兄ちゃん」

    「ん? どうした?」

    「台風,明日には過ぎてるといいね」

    「う,うん。そうだな。でも……」

    「でも? どうしたの?」

    「このままさ,台風がすごくなって,中止っていうのも悪くはないかなぁ,なんて」

    「アンタ,バカァ?」

    「お前はアスカかよ!」

    「だってお兄ちゃんが,シンジ君みたいなことを言っているんだもん」

    「いや,そういうんじゃなくてさ。なんていうか……」

    未久史はそう言って牡丹の顔を見つめ,ため息をついた。

    「あー,お兄ちゃん怖じ気づいたんでしょ!」

    「ち,違うよ。そういうわけじゃ……。そういうわけか……やっぱり」

    「何で? あんなに楽しみにしてたじゃん。てるてる坊主なんて作ってさ。田中さんだって,きっと楽しみにしてるんだよ? あ,もしかして,『本当の僕のことを知られたら嫌われちゃうぅぅ』なーんて思ってるんじゃない?」

    「う,うん。そんなところ……かな」

    「ばっかだなー。本当の自分なんて,あるわけないんだよ? 今,ここにいるお兄ちゃんだけが本当のお兄ちゃん。そのお兄ちゃんを,田中さんは好きだって思ってくれているんだよ? もっと自信持ってよ! もう,なっさけないなぁ」

    「……うん。そ,そうだよな。ありがとう,牡丹。お前という妹がいて,僕は本当に幸せだよ」

    「でしょ? それにね,もしダメだったら,お兄ちゃんの面倒は私が一生見てあげるから」

    そのとき,牡丹の瞳に暗い光が宿ったことに,未久史が気づくことはなかった。

  65. LSK より:

    【旅立ちの前日】(田中編)

    「ミクシィ,さっきから何回無言電話かけてるの?」

    「お,お母さん。違うよ,無言電話なんかじゃないよ」

    「でもずっと受話器を握って黙ってるじゃない。それを無言電話って言うのよ?」

    「だから違うってば,天気予報だよ」

    「なーんだ。あなた明日からサークル合宿だもんねぇ」

    「うん,中止になるんじゃないかって心配でね」

    そう,ミクシィは家族にはサークル合宿に行くと告げていたのだ。

    だからこんな言い訳をしている間も,ミクシィの胸は重く苦しい気分になっていった。

    もういっそのこと,中止になっちゃったほうがいいのかもね……。

  66. LSK より:

    そして,旅立ちの日がやってきた。

    あれだけ悩んでいたミクシィ,未久史の思いとは関係なく,台風一過の晴天。

    未久史は父親の愛車,ダイハツ ムーヴ カスタムに荷物と牡丹を乗せて待ち合わせ場所,大学の裏門前に向かった。

    到着したのは10時27分。待ち合わせ時間の3分前のことだ。

    だが,時間になってもミクシィの姿は見えない。

    助手席ですやすや眠る牡丹を横目で見つつ,未久史は,胸に溢れる不安で一杯になっていた。

    「田中さん,やっぱりいやになっちゃったのかな……」

    10分,15分,20分……。

    待ち合わせ時間から25分が経過した10時55分。

    ついに,ミクシィが裏門の内側から姿を現した。

    「遅くなってごめんね,サークル室に忘れ物しちゃって,取りに行ってたんだ」

    「あ,そうなんだ。よかった。もしかしたら来てくれないのかもって思っちゃってたよ」

    「え,そんなわけないよ。約束したら,ちゃんと来るよ? 私は」

    「そうだよね。うん,信じてたよ」

    「なーに,そのとってつけたような。もーぅ」

    いつの間にか目を覚ました牡丹が口を挟む。

    「お兄ちゃん,センパイが来てくれるかどうか心配で,さっきまでずーっと独り言言ってたんですよ? 『やっぱ来てくれなくても不思議じゃないよなぁ』なんて」

    「おい,ば,ばか! そんなこと……言ってな」

    「言ってたじゃーん。何照れてんの?」

    「うふふ。そっか,中田君,心配だったんだ。ごめんね」

    「い,いや,いいんだよ田中さん,こうして来てくれたわけだしさ」

    「って,ほら,やっぱ来てくれないと思ってたんだよ,お兄ちゃん」

    「あ……。ばか,牡丹!」

    ミクシィと牡丹が顔を見合わせて笑っている間,中田は一人,照れくさそうに頭を掻いていた。

  67. 『今日のオープニング曲はペンネーム‘プラッチック’さんからのリクエストでこの夏大ブレイク間違いなしの曲……』

    「あっ、俺この曲好きなんだよねぇ」

    ラジオから流れる曲に突然反応をみせる中田

    「なに突然。ずっと黙ってると思ったらそのリアクション?」

    「あっ、いや、なんか喋らないとなぁ… と思って…」

    3人で車に乗り込んで出発したもの、なぜか車内は沈黙に包まれていた

    あの牡丹でさえ押し黙っている

    (う〜ん、いざこうして狭い空間で一緒にいると緊張して何喋っていいかわかんないよ…)

    ミクシィもやはり緊張しているようでその様子がバックミラー越しで中田にも確認できた

    「お兄ちゃん。よく考えたら私、あんまりセンパイ自身のコトよくしらないんだよね」

    「私自身のコト?」

    「うん。センパイもお兄ちゃんのコトあまり知らないでしょ? だからここでちょっと自己紹介してみません? お兄ちゃんだってセンパイのコト知りたいでしょ? それにこの旅は仲良くなるためのものでもあるんだし、何かキッカケで話が弾むかもしれないじゃん!」

    「そう言われればそうだな。よし、じゃ牡丹からな」

    「なに言ってるの、お兄ちゃん。こういうのはまず男性からでしょ!」

    「おっ、俺からかぁ。う〜ん、えっと俺は…」

  68. LSK より:

    「えっと……、俺は……中田…… 未久史です」

    「ちょっとお兄ちゃん、そんなのここにいる人、みんな知ってるから!」

    「ふふふ……中田君、何緊張してるの?」

    「いや、だってさ……こういうの、苦手なんだよ」

    「じゃあお兄ちゃん、私が質問してあげるね? お兄ちゃんが好きな人は、誰ですか?」

    「え? そ、そんなの内緒だよ!」

    「まさか……、田中先輩?」

    「お、おい! 何言ってるんだよ! た、田中さん、こいつさーもう、このとおりほんとにお転婆で」

    「お転婆とか全然関係ないから! もー、お兄ちゃんってば、せっかく私が告るチャンスあげたのに!」

    「うふふふ……。二人とも、仲がいいのね」

    「仲がいいっていうか……なあ?」

    「仲いいよね? おにーちゃん」

    「何だよ、その猫なで声は! 気持ち悪いな」

    「あははははは……。やっぱり仲良しだー」

    「ま、まあ否定はしないけど……さ」

    「ふーん、お兄ちゃん、否定しないんだー。ほんとは……」

    「ほんとは?」

    「なーいしょ」

    「牡丹ちゃん、なんか意地悪だねー、お兄さんに」

    「そんなことないよー、私、お兄ちゃんがだーい好きなんだもん」

  69. LSK より:

    「もう、なんだか妬けちゃうな。私、一人っ子だから」

    そのとき、ミクシィは心の底からそう思った。

    その言葉を聞いた牡丹は、生まれてこの方感じたことがないほどの、得も言われぬ優越感に浸っていた。

    そして未久史は……最近お気に入りの歌、高橋名人の「スターソルジャーのテーマ」を口ずさみながら、ただひたすらに海を目指して車を走らせていた。

  70. LSK より:

    ミクシィの言葉を聞いてから、なんとなく無言だった3人。

    口火を切ったのは、やはり牡丹だった。

    「じゃあね、次に自己紹介をするのはぁ……田中先輩!」

    「え? 私?」

    「だって、ここには3人しかいないんだから!」

    「そ、それもそうね……」

    観念した様子で、ミクシィは続ける。

    「んーと、私は田中ミクシィです。カウンセラーを目指して勉強中。あと……」

    「あと?」

    「彼氏を募集中。背が高くてソフトマッチョで!」

    「た、田中さん……それさ」

    これまで黙っていた未久史が口を開く。

    「それ……、Perfumeの『彼氏募集中』じゃない? 広島時代のさ、パッパラー河合プロデュースの」

    「何それお兄ちゃん、ぱふゅーむって……」

    「あ、中田君知ってるんだ! 中田だけに」

    「い、いやPerfumeのことは知ってるけど、中田姓とは関係ないよ?」

    「えー、またまたぁ、もしかして中田ヤスタカの親戚だったりして!」

    「え、田中さんなんで知ってるの? 中田ヤスタカって、私とかお兄ちゃんのお父さんのお兄さんの息子……つまり、私たちのいとこなんだよ? お兄ちゃん、田中先輩にそんなことまで話したの?」

    「い、いや……。っていうか、え? Perfumeのプロデューサーの中田ヤスタカって、あのヤスタカ兄ちゃんなの?」

    「ちょ……お兄ちゃん、そんなことも知らなかったの?」

    「う、うん」

    「えー、ほんとに? あなたたち、あの中田ヤスタカと親戚なんだ! すごーい。私ね、capsuleがすごい好きなんだ」

    「あ、そうなんだ。じゃあさ牡丹、capsuleのアルバム、持ってきてるよね? それかけようよ」

    「おっけー! おにいちゃん♪」

  71. LSK より:

    capsuleのアルバム「FRUITS CLiPPER」の一曲目、「CS Entranceeeee6」が車内に響き渡る。

    ビートを刻むようにハンドルを指先で叩く中田。

    曲が「FRUITS CLiPPER」に切り替わるタイミングで、「Are you crazy?」と囁く牡丹。

    二人の姿を見て、優しく微笑むミクシィ。

    これ以上の平和というものがこの世にあるのだろうか。3人はそれぞれ、自分の言葉でそんなことを考えていた。

    この先に待ち受ける波乱も知らずに。

  72. 匿名 より:

    実はクローン人間(大量生産)

  73. 匿名 より:

    成城大学という微妙なとこがリアル

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